【主訴】腹痛を伴う下痢 冷え
【患者さん】尼崎市在住 30代 女性 医療従事者
【初診日】2014年11月2日
【現病歴】短大生の頃から、外食や身体を冷やした後に腹痛を伴う下痢を発症する。腹痛が一番痛かった時は、意識を失った。短大卒業後に、ハワイに留学をする。ハワイでは、強い冷房や現地の食事の影響で、腹痛下痢が一番ひどい時期だった。帰国後に就職するも、外食や身体を冷やすと腹痛を伴う下痢は現在も続く。
【既往歴】4年前子宮筋腫。現在、腎結石。
【その他の情報】腹痛下痢の時に、陀羅尼助丸を服用すると腹痛下痢は緩解した。
幼少期は食べるのが遅く、胃腸は弱かった。胃腸以外は丈夫だった。
高校生の時に、生理が飛ぶ時があった。高校生の途中までテニスをしていた。
短大生の時には、生理の量が2~3ヶ月増えた時期があり、その時に内臓の様な黒い塊が出てきた。スポーツはしなかった。
ハワイに留学中に肝斑が出来る。留学以降は、筋トレ等で身体を毎日動かす様になる。
現在の仕事(医療)についてから、明け方(4~5時)に尿意で目が覚める事がある。
【体表観察情報】
脈診:1息4至。 滑弱枯。 左右共に、2指で押切れ。1指で押切れず。
舌診:暗紅(少し紫)色。湿潤。老舌。舌に力が入る。舌下静脈の怒張はあまり強くない。薄白苔
原穴診:左後谿が冷えて実。右血海(実)。左三陰交(実)。右太衝(実)。
腹診:左脾募、胃土、右肝相火、左大巨に邪。右少腹急結。
背候診:左心兪(虚)で、細絡。左膈兪(実)。右膏肓(実)。右神堂(実)。左脾兪(虚)。左胃兪(実)熱。左三焦兪(虚)。右腎兪(虚)。右志室(虚)。
【診断と治療】
東洋医学では、痛みの性質により病因を見分ける方法があります。激痛は、冷えや瘀血で起きる事が多いと考えます。子宮筋腫がある事や、ツボの反応や舌の状況等により、瘀血が大きく係わっていると考察しました。瘀血が形成される理由は色々ありますが、該当患者さんの場合は精神的緊張が大きく係わっていると考察しました。また、素体として脾の臓が弱いため、瘀血の症状として一番弱い消化器系に腹痛下痢という形で症状が出たと考えました。
注)東洋医学では、『脾の臓』は消化器系に関わると考えられています。
証:肝鬱血瘀>傷食証
治則治法:活血化瘀
治療処置:左後谿と左三陰交、同時に刺鍼
【結果と考察】
2回目の治療の時に確認した内容。
腹痛下痢:腹痛が10分の1位になった。下痢をしなくなった。
大便:スッキリ出ている。
明け方の尿意:減っている。
朝、起床時に起きやすくなった。
生理の期間(6日間)は変わらなかったが、2日目に経血がいっぱい出た。
2015年1月30日来院時に、患者さんに腹痛下痢の症状を確認。→再発せずに済んでいる。
以上の内容より、治療後の生理の時に経血が多く出て、瘀血が下った事が該当患者さんの症状を大きく変えたと考えました。
今回患者さんの治療をさせて頂いて、私自身も鍼灸の素晴らしさを体感する事が出来ました。ありがとうございました。
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