先日買い物をしていたら、レジに『屠蘇(とそ)』が置いていました。
いい香りがしていたので、買ってみました。
屠蘇とは、
年頭に、1年の邪気を払い延命を願って飲む薬酒。
屠蘇散を酒または味醂(みりん)に浸したもので、年少者から順に飲む。おとそ。屠蘇酒。
大辞林より
屠蘇が実際にどの様な効果があるのか?
中に入っている生薬の働きを、調べてみました。
桂皮(けいひ)
クスノキ科の常緑樹を乾燥させた樹皮。シナモン。
【効能】
散寒薬(さんかんやく)に分類・・・冷えを取り、温める作用があります。
・温中補陽:腎陽虚の四肢の冷え。腰や膝がだるく無力。寒がる。頻尿。排尿困難。夜間尿。
・散寒止薬:虚寒の胃痛、腹痛、仙痛。虚寒の月経痛。
・温通経脈:慢性の皮膚潰瘍、寒冷膿瘍、化膿傾向に乏しい慢性炎症。
山椒(さんしょう)
ミカン科のサンショウ属植物などの成熟した果実の果皮。
【効能】
散寒薬(さんかんやく)に分類・・・冷えを取り、温める作用があります。
・散寒止痛、燥湿:冷えによる激しい腹痛、冷え、嘔吐、摂食不能。
・解毒駆虫:回虫など腸内寄生虫による腹痛、嘔吐。
陳皮(ちんぴ)
ミカン科のオオベニミカン、コベニミカン等の成熟した果皮。ミカンの皮。
【効能】
行気(こうき)薬に分類・・・気の停滞を取り除く作用があります。
・理気健脾:気滞による腹満、悪心、嘔吐、下痢。水のめぐりが悪くなった為に起きた、腹満、悪心、嘔吐。
・燥湿化痰:痰が絡まるタイプの咳嗽、胸苦しさ。多痰。
桔梗(ききょう)
キキョウ科のキキョウの根。
【効能】
止咳平喘薬(しがいへいぜんやく)に分類・・・痰をとったり、肺を潤したり、肺気を下ろして、咳嗽や呼吸困難や喘息を改善する。
・宣肺去痰:風邪等による咳嗽や喀痰など。
・排膿消腫:肺化膿症などの胸痛、膿血痰など。
大茴香(だいういきょう)
モクレン科のシキミ属植物の果実。スターアニス、八角(はっかく)、八角茴香(はっかくういきょう)。
【効能】
散寒薬(さんかんやく)に分類・・・冷えを取り、温める作用があります。
・散寒止痛:両側下腹~陰部~大腿内側の冷え痛み。
・理気和胃:胃寒の上腹部痛、嘔吐、食欲不振など。
丁字(ちょうじ)
フトモモ科のチョウジノキの花蕾。クローブ。
【効能】
散寒薬(さんかんやく)に分類・・・冷えを取り、温める作用があります。
・温中降逆:胃寒のシャックリ、嘔吐など。胃腸が冷えて弱った場合の食欲不振、悪心、嘔吐、下痢。
・下気止痛:奔豚気逆(ほんとんきぎゃく。パニック障害の様なモノです。)による胸腹疼痛。
・温腎助陽:陰部の冷え、帯下。
浜防風(はまぼうふう)
セリ科のハマボウフウの外皮を去った根。
【効能】
滋陰薬(じいんやく)に分類・・・潤いを増す作用があります。
・清肺熱、養肺陰:熱や乾燥による乾いた咳、喉や鼻の乾燥、切れにくい粘った少量の痰、発熱。
・養胃生津:熱病による胃の潤いの損傷による口渇。
補足:効能については、医歯薬出版株式会社の『中医臨床のための中薬学・神戸中医学研究会編著』を参照させて頂きました。
効能に書かれている具体的な作用は、その薬単体よりも、他の薬と組合せてより良い効果を発揮させていきます。
例)桂皮に附子・熟地黄・山薬・山茱萸などと用いると、温中補陽の効果があり、腎陽虚の四肢の冷え。腰や膝がだるく無力。寒がる。頻尿。排尿困難。夜間尿。等に効果があります。
まとめ
今回購入した屠蘇には、7種類の生薬が入っていました。
上記の効能を確認すると、胃腸を整えたり、温めたり、冬場の風寒邪(ふうかんじゃ。初めに冷えから起こる風邪です。)の予防の作用が主にある事が分かりました。
皆様もお正月は、屠蘇酒を飲んで、邪気を屠(ほふ)り、心と身体を蘇らせてみては如何でしょうか?
参考文献
中医臨床のための中薬学 医歯薬出版株式会社
文:荒木かおり