東洋医学からみた『心(しん)』のお話の続きです。
【心は神明(しんめい)を主る】
古典である黄帝内経・素問には、以下の記載があります。
心者、君主之官也。神明出焉。
素問・霊蘭秘典論篇(8)より
この神明というのは、精神・意識・思惟活動のことを言います。
上記の文章を意訳すると、
心は、君主に喩えられます。精神・意識・思惟活動は、心から出るのです。
つまり、心が精神思惟活動を主宰している事を指し示しています。
また、東洋医学では、精神の安定には、血が大きく関わると考えられています。
関連:『気』について。その6
その為、血との関係が非常に強い『心』が、精神思惟活動を主宰しているのも理にかなっているとも言えます。
心と血の関係については、前回の『心について。その3(血脈を主る)』をご参照下さい。
【動悸・不眠・多夢・不安感】
心の病変では、精神・意識・思惟活動に異常をきたします。
動悸がしたり、睡眠が浅くなったり、よく夢をみるようになったり、焦燥感や不安感が生じるようになります。
重篤になると、精神が完全に破綻し、譫妄(せんもう)や狂躁(きょうそう)の状態になります。
上記のように、ある種の精神病には神明の失調が関わることがあります。
参考文献
東洋学術出版社 黄帝内経素問
東洋学術出版社 針灸学[基礎編]
燎原 基礎中医学
文:荒木かおり