東洋医学から観た、胃のお話の続きです。
前回までのお話はこちら
前回、胃が受納し腐熟した水穀の精微が人体の栄養源になっている事をお話しました。
胃の受納と腐熟は、脾の水穀の精微を運ぶ役割と密接に関係しています。
その働きは、生命が生まれた後に栄養を摂取し、生命活動を維持するのに必要な条件の1つです。
その為、胃と脾をあわせて『後天の本(もと)』といいます。
また胃と脾の機能を要約して『胃気(いのき)』という事があります。
今回のお話と共に、前回のお話も読んで頂けたらと思います。
今回のお話は、ここから
胃気について
古典の医学書には、胃気についての記述が多数出てきます。
その中の1部を紹介致します。
【黄帝内経素問ー平人気象論篇より】
平人之常気稟於胃。
胃者平人之常気也。
人無胃気曰逆。逆者死。
かおり意訳
健康な人は、正常な脈と呼吸の気を胃から受けています。
その為、胃気があるということは、健康な人の正常な脈と呼吸の気を示します。
人の脈と呼吸に胃気がなければ、逆証(ぎゃくしょう)です。逆証の人は、死にます。
【鍼道秘訣集ー胃気有無之大事より】
胃ノ気有ル病人ハ病ヒ重クトモ不死タトヘ病軽クトモ胃ノ気甲斐無キ時ハ死に赴ク也
かおり意訳
胃の気がある病人は、重い病気であっても死なない。逆に、軽い病気であっても胃の気が無ければ死んでしまう。
【脈法手引草ー胃の気の論より】
諸々の脉、胃の気ある時は生き、胃の気なき時は死すと。
かおり意訳
色々な種類の脈の中に、胃の気が含まれている脈の人は生き、胃の気が全く含まれていない脈の人は死にます。
【胃の気の大事】
以上の様に、胃の気の有無は人の生死に関わると古来から考えられてきました。
重い病気だったとしても、胃の気があれば、回復できると考えられていました。
それは、東洋医学では『気』を重視しており、『気』の生成には飲食物が大きく関わります。
その飲食物を受取るスタートの臓腑が『胃』です。
その為、古来から『胃の気』というのを重視してきたと思われます。
参考文献
黄帝内経素問 東洋学術出版社
鍼道秘訣集 皇都書林
脈法手引草 医道の日本社
胃の気の脈診 森ノ宮医療学園出版部
文:荒木かおり