東洋医学から観た、胃のお話です。
前回は、胃について。その1
前回では、胃の位置と形態についてお話を致しました。
今回から胃の機能について、お話を致します。
水穀の受納と腐熟
水穀とは、飲食物の事です。
口から入った飲食物を、胃が受取る働きがあります。
その受取った飲食物を生命活動を行うために必要な『水穀の精微』になるまで腐熟(ふじゅく)します。
その為、胃は『水穀の海』と形容されます。
水穀の精微は『脾』(ひ。臓腑の名前です)によって大部分が吸収され、肺に輸送され全身を栄養します。
その為、『肺』の流注(るちゅう。気血の経路の事です。)は、『胃』から始まっています。
水穀の海
中国の古代の医学書である『黄帝内経』には、以下の文章があります。
岐伯曰、胃者、水穀之海、六府之大源也。
五味入口、蔵於胃、以養五蔵気。
気口亦太陰也。
是以五蔵六府之気味、皆出於胃、変見於気口。
黄帝内経素問ー五蔵別論篇より
荒木意訳
岐伯(ぎはく。古代の学者の名前)が言うには、
『胃』は、水穀の海です。そして、六腑(ろっぷ)の大源です。
飲食物は口から入り、胃に一旦蓄えられて、そして、五蔵の気を養います。
気口(きこう。手首にある脈を診る部位です)も、また太陰です。
注)太陰というのは、経脈の流れである『足の太陰脾経』と『手の太陰肺経』の2つの事を指しています。これは、脾の臓(胃と対をなします)が胃にある水穀の精微を運ぶ役割を担い、また、肺の臓の流注が手首を通る為に、『また太陰です』と書かれているのだと思います。
こうしたわけで、五臓六腑の気と味は、すべて胃から出ていると言えますし、その胃から肺へ水穀の精微が昇り、全身に行き渡る為に、手首の脈を診る事によって全身の異常を知る事が出来るのです。
補足説明を致します。
六腑の大源について
腑というのは、飲食物を通す管の役割があります。
もちろん、その途中で身体に必要なモノを吸収し、不要なモノを体外に排出する働きがあります。
胃というのは、上記の役割の大本ですよ。という意味だと思います。
古代人の身体観としては、
実際に人間を解剖した際に胃袋にある飲食物の残骸を見ている筈です。
その為、身体を養う飲食物を消化するのは、胃が大きな役割を担っていたと考えていたのではないかと思われます。
次回は、上記でお話をした事を掘り下げてお話をしていきます。
文:荒木かおり