今回は、『六淫』の中の『火邪』と『暑邪』について、お話を致します。
六気と六淫
六気のうちの『火』と『暑』は、夏季の主気です。
人体が適応できる『火』と『暑』は、陽気を養います。
人体の適応を超えた『火』と『暑』は、『火邪』と『暑邪』という『六淫(りくいん)』の病邪になります。
この適応を超えるというのは、異常気象の場合もありますし、『六気』を感受する人の体調の問題もあります。
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元々『火』と『暑』は、自然界の灼熱の気温を指していました。
『火』と『暑』は、ともに火熱の類に帰属しますが、共通している部分と異なる部分があります。
先ずは、火邪と暑邪の共通点についてお話を致します。
火邪と暑邪は、温熱の陽邪である
火邪・暑邪は温熱の陽邪であり、人体に熱の所見が現れます。
熱の所見として、下記のような例があります。
・高熱。
・悪熱(おねつ)→熱がって、温かいものや熱性のものを嫌がること。
・多汗(たかん)→下記に解説致します。
・大きな波が岸に打ち付けるような感じの脈(洪脈)になったり、脈拍が早くなる(数脈)。
・舌の色が紅色になったり、乾燥する。
・便秘(兎糞)
また、火や暑は陽邪であり、火や熱は炎上する性質の為、身体の上部に症状が出る事が多いです。どのような症状が現れるかというと、
・目の充血や張ったような痛み(腫脹疼痛)。
・口内炎や口舌のびらん。
・頭痛。
・めまい(目眩)。
・顔面が赤くなる。
暑邪や火邪の炎上する性質は精神にも影響を与えます。
・焦燥感。
・不眠。
さらに甚だしくなると、
・狂躁。
・意識障害など。
これら精神症状は、精神を統括している部位が火に攻められる為(心神が上擾されるため)に生じる症状と考えます。
火邪と暑邪の特徴として、
主に身体の上部や精神に、熱による症状が生じる。
そして、火というのはまたたく間に燃え広がるので、症状の進行が早いです。
熱中症等も、早く処置をしないとあっという間に進行します。
火邪と暑邪は、傷津耗気しやすい
火邪と暑邪が多汗を生じるメカニズムについて。
火邪と暑邪はともに陽邪であり、毛穴を開ける性質(開泄性)があります。
毛穴が開いた状態で、体内の水分(津液)が熱によって蒸されるため、溢れ出た水分が汗となって身体の外に出ます(蒸騰外迫)。
これが、火邪と暑邪による多汗のメカニズムです。
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津液が消耗する為、下記の症状が生じます。
・口渇
・多飲
・尿の色が濃くなる
この時に気をつけなければいけないのが、気も汗とともに体外に漏れ出るという事です(外泄)。
発汗は津液の損耗だけでなく、気も損耗します。
気が損耗するために、下記の症状が生じます。
・息切れ
・力が入らない(無力感)
・ひどい場合は、気絶等の意識障害が生じます(人事不省)
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火邪と暑邪の異なる点
火と暑は共に夏季の主気ですが、少し時期が異なります。
中国においては夏季の前半は、『火』。夏季の後半は『暑』になります。
中国の気候では、夏季の前半は熱邪が主体であり、熱証を表すため火邪が主体になり、
夏季の後半は、雨水が次第に多くなり熱邪に湿邪が兼ねることが多くなるために、暑邪が主体になります(暑は多く湿を挟む)。
また、
暑邪は純粋の外邪で、発病の時期は夏季です。
一方火邪は、
風邪・寒邪・湿邪が転化して生じる事もあります。
他にも、
食べ過ぎ(臓腑の機能失調)や、精神的ストレス(情志の失調)等でも火邪は生じる事があります。
また、人体において痙攣等の内風(ないふう)を生じたり、鼻血や吐血や血尿等の出血を生じる事もあります。
暑邪と火邪の異なる点
暑邪 | 火邪 | |
主な季節 | (中国では)夏季の後半 | (中国では)夏季の前半 |
生じる時期 | 夏季のみ | 生じる条件が揃えば、一年中 |
その他 | 湿邪を伴う事が多い | 痙攣や出血の原因になる |
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