東洋医学からみた『脾』の機能の続きです。
【前回までのお話はこちら】
【今回のお話は、ここから】
これまで述べた臓腑には、各臓腑の働きをイメージし易いように、『~~の官』という風に古典に書かれていました。
・肺は相傅之官。
・大腸は傳導の官。
関連:大腸について。その1
【脾胃の者、倉廩の官】
脾については、古典である『黄帝内経』に、下記の内容の記述があります。
脾胃者、倉廩之官、五味出焉。
黄帝内経素問(霊蘭秘典論篇)より
かおり意訳
脾と胃は、飲食物を管理する役職に就いています。そのため、(消化吸収の役割を担って)五臓に栄養を与える役割があります。
ちなみに、倉廩(そうりん)とは、穀物を蓄えておく倉庫のことです。
ここでも、脾胃と飲食物の消化・吸収の関係が伺われます
また、五臓は五神を蔵すというのがありました。(下記のリンク『肺について。その3』に、五神についての解説があります)
・肺は魄を蔵す。
そして、脾は『意と知(智)』を蔵しています。
意とは、思い巡らしたり考えるということです。
知(智)とは、物事を認識したり、判断する能力のことです。
脾が蔵している『意・知(智)』が正常に機能していれば、物事を正しく判断したり、思い巡らすことが出来ます。
逆に、正常に機能出来ないと、物事をうまく判断出来なくなったり、正常に考えることが出来なくなります。
実際に、食べ過ぎて脾に負担がかかると、頭がボーっとして上手く考えることが出来なくなることがありますよね。
そういう状況を想像すると、イメージがし易いと思います。
また、脾が原因で起きるタイプの鬱病も、意と知(智)が正常に機能していないと考えることが出来ます。
頭がボーっとして、なんとなくやる気がでない状況です。
そういう場合は、脾を健康にするための養生(たとえば、脾に負担がかかりにくい食事や、運動をして手足をよく動かす)をしながら、脾を良くする経穴に鍼を打つと、治っていきます。
次回は、脾と胃の関係をお話して、脾についてはいったん終わります。
追記
参考文献
黄帝内経素問 東洋学術出版社
臓腑経絡学 改訂第三版 アルテシミア
鍼灸学[基礎篇] 東洋学術出版社
基礎中医学 燎原
文:木下かおり